第二の欠点は、超人的推理にかたよりすぎて、もっとも平凡なところから犯人が推定しうる手掛りを不当に黙殺していること。
例えば犯人は東京の犯行と見せかけて大阪で犯行を行ったが、そのためには、砂のつまったトランクを大阪のアパートで受取らねばならず、コントラバスケースを盗みだしてアパートへ持ちこみ、また持ちださねばならず、以上の如くアパートを中心に大きな荷物を入れたり出したりしているのである。
警察の刑事の捜査だったら、こういう最も平凡な点から手がゝりをつかみだすのが当然で、読者の方では無論そうあるべきものと思っているから、刑事がそれをかぎださぬ以上、そんな疑いがないからだ、と思う。