そのあげくに、暑気払いのつもりで、私もこの夏、本格推理小説を書きはじめたが、これは趣味からのことで、私自身は探偵小説を謎ときゲームとして愛好しているだけの話、探偵小説は謎ときゲームでなければならぬなどゝ主張を持っているわけではない。
木々高太郎氏の探偵小説芸術論、これも探偵小説を愛するあまりのことで氏の愛情まことに深情け、あげくに惚れたアノ子を世の常ならざる夢幻の世界へ生かそうという、至情もっともであるが、いささか窮窟だ。
探偵小説はこうでなければならぬなどと肩をはってはいけないもので、謎ときゲーム、芸術の香気、怪奇、ユーモア、なんでもよろしい、元々、探偵小説というものは、読者の方でも娯楽として読むに相違ないものなのだから、本来が、軽く、意気な心のあるものでなければならない。