たとえば、恐怖を顔に表して死んでおった、などゝあるが死顔に恐怖が現れても死ぬ瞬間の恐怖などゝは関係のないことで、たのしい心中でも死顔は苦悶にゆがむ。
恐怖の死でも、死後の肉体の条件で幸福な顔付になるかも知れず、そんなものが犯罪捜査の手がゝりになったとしたら、この探偵は大概失敗するにきまっていると私は考えるが、然し案外大マジメに日本の探偵小説にはこんなところが現れてくる。
犯罪の捜査上、どうしてもそれだけの法医学上、又は他の学問上の専門知識が必要だという絶対の要請のあるところでだけ、正確な専門知識の裏づけを欠かないように心がけるべきものではないかと思われる。