わけが分らずボンヤリしているうちに空襲警報がなったのだ。
モンペもつけず酔っ払っていた母の身仕度に呆れるぐらいの時間がかかったけれども、夜襲の被害を見くびることしか知らなかった私は窓をあけて火の手を見るだけの興味も起らず暗闇の部屋にねころんでおり、荷物をまとめて防空壕へ投げこんで戻るたび、あっちへも落ちた、こっちにも火の手があがったというけたたましい女中の声をきき流していた。
そのとき母のさきに身仕度をととのえて私の部屋へきていた男が酒くさい顔を押しつけてきて、私が顔をそむけると、胸の上へのしかかってモンペの紐をときはじめたので、私はすりぬけて立ちあがった。