私は我まま一ぱいに育てられたけれども、たとえば母も女中も用たしにでて私一人で留守番をしてお料理はお前が好きなようにこしらえておあがりといわれていても、私は冷蔵庫のお肉やお魚には手をつけずカンヅメをさがす、カンヅメがなければ御飯にカツブシだけ、その出来あがった御飯がなければ、あり合せのリンゴやカステラの切はしだけでも我慢していられる。
ペコペコの空腹でも私はねころんで本を読んでいるのだ。
だから我まま一ぱいなどといっても空腹には馴れており、それも我ままのせいかも知れないけれども、我ままもまた相当に困苦欠乏に堪える精神を養成するもので、満堂数千の難民のなかで私が一番不平をいわないようだった。