たとえば私が出かけようとして身支度ととのえているところへ、知りあいの隠居ジイサンなどがやってきて、ほらごらんよ、うちの孟宗でこんなタバコ入れをこしらえたから、などと見せにきて一時間二時間話しこむ。
私は嫌いな人にでも今日は用があるから帰ってなどとはいえないたちで、まして仲よしの隠居ジイサンだから、帰って、とはとてもいえない。
私は私の意志によってどっちの好きな人を犠牲にすることもできないから、眼前に在る力、現実の力というものの方にひかれて一方がおろそかになるまでのことで、これは私にとっては不可抗力で、どうすることもできないのだもの。