人間は、なんてまアくだらなく悲しいものだろう、馬鹿げた悲しさだと私はいつもそんなときに思いついた。
私が入院しているとき、お相撲の部屋の親方だかが腫物か何かで入院しており、一門のお弟子、関取から取的まで、食事のドンブリや鍋に何か御馳走を運んできたり、お酒をぶらさげてきたり賑やかだったが、その一人に十両の墨田川というのは私の同じ町内、同じ国民学校の牛肉屋の子供で、出征の前夜に私の許した一人であった。
さっそく私に結婚してくれなどといったけれども、彼も物分りの悪い男ではなく、女に不自由のない人気稼業で、十両ぐらいで結婚なんて、おかしいでしょう、というと、じゃア時々会ってなどといったが、病後だからとその時はすんだけれども、巡業から戻ってくるたび、毎日のようにやってくる。