映画や芝居の見物よりも私にとって最もうれしい外出はその散策で、私は満足した衣裳を身にまとうとき、何より生きがいを感じることができた。
私はその生きがいを与えてくれる久須美に対してどのように感謝を表現したらいいか、そのことで最も心を悩ました。
私の浮気もいわば私の衣裳のよろこびと同じ性質のもので、だから私が浮気について心を悩ますのは帽子や衣裳や靴と違って先方に意志や執念があることであり、浮気自体にうしろめたさを覚えたことはなかったが、私はこの浜で、大学生やヨタモノみたいな人や闇屋渡世の紳士やその他お茶によばれたり散歩やダンスに誘われたが、私はいつも首を横にふってことわった。