彼は答える代りに、私の額や眼蓋のふちの汗をふいてくれたり、時には襟へ布団をかぶせてくれたり、ただ黙って私を見つめていたりした。
私がノブ子さん田代さんに迎えられエッちゃんと別れて温泉から帰ってきたとき、私は汽車の中で発熱して、東京へ戻ると数日寝ついてしまった。
見舞いにきた登美子さんはあなたのからだは魔法的ね、いい訳に苦しむ時には都合よく熱まででるように、九度八分ぐらいの熱まで調節できるんだからな、天性の妖婦なのね、などと私の枕元でズケズケいうのだが、私はいい訳に苦しむ気持などは至って乏しくて、第一私はいい訳に苦しむよりも病気の方がもっと嫌いなのだもの、誰が調節して九度八分の熱をだすものですか。