けれどもノブ子さんは肉体的欲求などは事実において少いのだから、別なことで苦しんでいる様子であったが、それは営々と働いて、自分の生活はきりつめて倹約しながら、人のために損をする、それを金々々、金銭の奴隷のようなことをいう田代さんが、いいのだよノブちゃん、それでいいのだ、という。
しかし実際それでいいのか、自分の生活をきりつめてまでの所得を浪費して、そして人を助けて果して善行というのだろうか、疑ぐっているのであった。
ノブ子さんはともかく田代さんや私たちがついているから損をしても平気だけれども、独立したら、こんな風でやって行けるかと考えて苦しんでいるので、実行派のガッチリ家、現実家だから、その懊悩は真剣であった。