そのことは現在日本に於ける情痴作家坂口安吾とても同じことで、これは人間の書物である、とか、だから又モラルをとく書物であるとか述べてみたところで、最も単純直接の意味に於て極めて率直に「良俗」に反する悪徳の書であることは論をまたず、当人が自覚してゐるものである。
千七百八十二年刊行の本書に著者はルソーの句をかりて「現代の世相を見て余はこの書簡集を公にした」といふ。
その筆法では一九四七年の現代でも同じ文句で間に合ふ筈で、これは醇風良俗に進歩がなかつたせゐばかりでなく、最も決定的な理由は、この本が人間性の真相を道破してゐる、だから、どうにも仕方がない、といふ意味に於てだ。