妙信、京二郎、安川らの一行が特攻基地へ廻されたのは四月の始めであつたが、基地はきゝしにまさる気違ひ騒ぎで、夜毎々々の兵舎、集会所、唄ふ奴、踊る奴、泣く奴、怒る奴、血相変り、殺気だつた馬鹿騒ぎである。
真剣をぬいて剣舞のあげくに椅子を真ッ二ツに斬りこむ男、ビールビンをガラス窓に叩きつける男、さうして帰らぬ征途につく。
規律などは滅茶々々、酔つたあげく兵舎の窓をとびだして妓楼へ行く奴、町へくりだし情婦の家へくづれこむのは良い方で、女を押へつけて無理無体に思ひをとげる奴、上官は見て見ぬフリ、士気があがつてゐるからアバレル、血気がなくては敵の軍艦に突ッこめない、まるでもう当り前の顔でかう言つてゐる。