彼は浅草のお寺の子供で、お経の方は仕方なしに覚えたけれども、清元と常磐津は師匠について身を入れて習つた。
喧嘩は強い方ではなかつたが、ミコシをかついで騒ぎまはるやうなことが大好きだから、戦争は度が過ぎると思つたが、坊主はどうも虫が好かぬ。
そんな性質だから、ビンタがなきや兵隊ぐらしも捨てたものぢやないなどゝ内々気楽に思つてゐるところへ、特攻隊、まだ死ぬのは早すぎる、まつたく暗い気持になつたが、ヤケ、ヤブレカブレ、飛行機のりになつた時から時々夜中に淋しさ、やるせなさで、ふいに首を突き起して思ひきり怒鳴りたいやうな気持になることがあつた。