さういふ関係になつてゐたから、はからざる終戦、母とトキ子は二人の男の膝づめ談判に困却して、なすところが分らない。
困つたことには、母とトキ子と胸の思ひが違つてゐた。
トキ子はすでに兄が戦死し一人娘であるから、聟とりといふことになるが、村山は資産家の三男坊で、私大の経済科を卒業してをり、すでに一人前の紳士であるが、安川は医者の三男坊で、絵カキの卵、また二十二の若年で、このさきどんな人間に成長するか、今のところは見当がつかない。
さういふ関係になつてゐたから、はからざる終戦、母とトキ子は二人の男の膝づめ談判に困却して、なすところが分らない。
困つたことには、母とトキ子と胸の思ひが違つてゐた。
トキ子はすでに兄が戦死し一人娘であるから、聟とりといふことになるが、村山は資産家の三男坊で、私大の経済科を卒業してをり、すでに一人前の紳士であるが、安川は医者の三男坊で、絵カキの卵、また二十二の若年で、このさきどんな人間に成長するか、今のところは見当がつかない。