夜になると各自立止つた地点を動かず篝をたいて不寝番を立て、三十五日を費して、遂に海まで突きぬけた。
海上には数千の小舟を敷きつめて待ちぶせてゐたから漏れる隙間はなかつた筈だが、次兵衛の姿はなかつた。
彼はすでに江戸へ逐電、信徒の旗本の手引で江戸城の大奥へまで乗込んで小姓の間を伝道して歩いてゐたが、江戸の生活が約二年、露顕の気配が近づくと風の如くに飄然長崎へ舞ひ戻つてきた。
夜になると各自立止つた地点を動かず篝をたいて不寝番を立て、三十五日を費して、遂に海まで突きぬけた。
海上には数千の小舟を敷きつめて待ちぶせてゐたから漏れる隙間はなかつた筈だが、次兵衛の姿はなかつた。
彼はすでに江戸へ逐電、信徒の旗本の手引で江戸城の大奥へまで乗込んで小姓の間を伝道して歩いてゐたが、江戸の生活が約二年、露顕の気配が近づくと風の如くに飄然長崎へ舞ひ戻つてきた。