どうせ一人前にはなれないときめて、せめて屋根裏で首をくゝるまでのあひだファルスでも書き残しておかうといふ考へで、落伍者の街である巴里にあこがれてをり、私の母もゆくゆくは私を巴里へ留学させるつもりにしてゐたのであるが、私はもし巴里へ行けば多分屋根裏で自殺をしてしまふだらうとなぜか決定的な暗い予感に脅えてをり、留学の幸福を予想することが全然できなかつた。
後日女のことで家出をして巴里へ行く機会を失つてしまつたが、私の暗い予感が私の旅行をはゞんでもゐたのである。
事実私は留学すれば予感通りの結末を招いてゐたかも知れぬ。