私は多分真実没頭することのできない性分で、先輩に師事したり、先人の作に没入して啓発を受けるといふやうな謙虚な道がとざされてゐるのだと思つてゐる。
持つて生れた性分だけの道を歩くことしか出来ないのだと近頃では思つてゐるが、ひところは葛巻のひたむきな読書のことなど考へると、私だけ真実といふものからノケ者にされてゐるやうな当てどのない苦しさを感じたものであつた。
だから私の一生は誰から影響を受けたといふやうな素性の正しいものはなく、そのくせ軽率な模倣癖は驚くほど旺盛であるから、その程度の影響は雑多無数でキリがない。