キミ子は太平に特別の好意を示してはゐなかつた。
たゞ彼を常に上座に坐らせたが、それは彼が新たに加入した不馴れに対するいたはりと、庄吉が常に太平をわが第一の友とよぶことに対する自然の結果にすぎなかつた。
キミ子は一座の人々を、あなたがたスレッカラシとよんで、太平だけを、この方は純粋な方だから、といふことが時々あつたが、悪意も善意もない言葉で、言葉だけの意味からいへば、純粋などとは意気とか粋の反語にすぎず、太平の武骨や粗雑さを確認するにすぎないやうな意味でもあるから、人々の皮肉な苦笑を生むだけのことだ。