太平の心は極めて自然に庄吉を黙殺してゐるばかりでなく、たぶん庄吉は愛人なしにゐられないキミ子の性情を知つてゐて、好ましくない男達の玩具になるより、自分の好む男と遊んでくれることを欲するために太平を選んだのであらうと考へてみたりするのであつた。
その考へはうがち過ぎて厭だつたが、そんなことにもこだはる必要がなかつたほど彼は庄吉を忘れてゐた。
そして庄吉の友情のこもつた手紙を読むと、その寛大さに涙ぐむほど感動しながら、庄吉に打ち開けてキミ子を正式に貰ひたいと思ひふけり、庄吉の悲痛なる人間苦を思ひやつてはゐなかつた。