――敬太郎はこんな話を聞くたびにへえーと云って、信じられ得ない意味の微笑を洩らすにかかわらず、やっぱり相当の興味と緊張とをもって森本の弁口を迎えるのが例であった。
この日も例によって例のような話が出るだろうという下心から、わざと廻り路までしていっしょに風呂から帰ったのである。
年こそそれほど取っていないが、森本のように、大抵な世間の関門を潜って来たとしか思われない男の経歴談は、この夏学校を出たばかりの敬太郎に取っては、多大の興味があるのみではない、聞きようしだいで随分利益も受けられた。
――敬太郎はこんな話を聞くたびにへえーと云って、信じられ得ない意味の微笑を洩らすにかかわらず、やっぱり相当の興味と緊張とをもって森本の弁口を迎えるのが例であった。
この日も例によって例のような話が出るだろうという下心から、わざと廻り路までしていっしょに風呂から帰ったのである。
年こそそれほど取っていないが、森本のように、大抵な世間の関門を潜って来たとしか思われない男の経歴談は、この夏学校を出たばかりの敬太郎に取っては、多大の興味があるのみではない、聞きようしだいで随分利益も受けられた。