芸術は自由の花園であるが、本当にこの自由を享受し存分に腕をふるひ得る者は稀な天才ばかり、秀才だの半分天才などといふものはもう無限の自由の怖しさに堪へかねて一定の標準のやうなもので束縛される安逸を欲するやうになるのである。
戦国時代の権謀術数といふものはこれ又自由の天地で、力量次第といふのであるが、かうなると小者は息がつづかない。
薬屋の息子だの野武士だの桶屋の倅から身を起して国持ちの大名になつたが、なんとかこのへんで天下泰平、寝首を掻かれる心配なしに、親から子へ身代を渡し、よその者だの自分の番頭に乗ッ取られるやうな気風をなくしたいといふことを考へるやうになつた。