家康は十人並よりはよつぽど偉い人で、公平に判断しても当代随一の人傑であつたが、時代が先についてきたのでむしろ時代に押されて自分自身を発見して行つたやうなお人好しで鈍感でお目出度いところのある人であつた。
家康が副将軍だなどと言はれて大変な人望があるものだから、秀吉の側近の連中は家康の変に鄭重慇懃な律義ぶりを信用せず、三河の古狸には用心しなければといふやうな疑心をいだいてそれとなく秀吉にほのめかす。
そのたびに秀吉は、家康といふ人は案外あれだけの人で、温和な人だ、と言ひきかせてゐた。
家康は十人並よりはよつぽど偉い人で、公平に判断しても当代随一の人傑であつたが、時代が先についてきたのでむしろ時代に押されて自分自身を発見して行つたやうなお人好しで鈍感でお目出度いところのある人であつた。
家康が副将軍だなどと言はれて大変な人望があるものだから、秀吉の側近の連中は家康の変に鄭重慇懃な律義ぶりを信用せず、三河の古狸には用心しなければといふやうな疑心をいだいてそれとなく秀吉にほのめかす。
そのたびに秀吉は、家康といふ人は案外あれだけの人で、温和な人だ、と言ひきかせてゐた。