クーデタがきらひだなどといふうちにいつ死ぬかも知れない怖れもまじつてきて、恥も外聞もなく狸婆アの嫁いぢめのやうな泥くさいことを平然とやつてのけたが、古今東西、天下をとつた男の中でこれぐらゐ不手際のとり方はめつたにない。
こんな下手クソな見えすいた口実をつけるぐらゐなら始めからアッサリ武力に訴へて然るべきであらうに、それが出来ずにかういふ泥くさい不手際でかすめとつたといふのは、彼はつまり凡そ人の天下をとるにふさはしくない場違ひ者であつた証拠である。
時代といふものは奇妙なもので、決してその時代の最大最高とは限らない人物が、時の流行の思潮によつて最大最高の位置につく。