彼の細君は父の主筋に当る家柄の娘で、元々父母が押しつけられ、その又父母が大いに有難がつて無理に押しつけた女で、別段家柄を鼻にかけるわけでもないが、陰気で、何かと云へば実家へ不満を書き送るやうなたちである。
彼は愛情をもたなかつたが、かうして情婦ができてみると、女房の悪いところがよく分つた。
けれども家柄が家柄で父母に対する重みがかゝつてゐるのだから、彼の不安懊悩は話の外で、いつそ日本の姿が消えてなくなれ、と考へてゐたものだ。
彼の細君は父の主筋に当る家柄の娘で、元々父母が押しつけられ、その又父母が大いに有難がつて無理に押しつけた女で、別段家柄を鼻にかけるわけでもないが、陰気で、何かと云へば実家へ不満を書き送るやうなたちである。
彼は愛情をもたなかつたが、かうして情婦ができてみると、女房の悪いところがよく分つた。
けれども家柄が家柄で父母に対する重みがかゝつてゐるのだから、彼の不安懊悩は話の外で、いつそ日本の姿が消えてなくなれ、と考へてゐたものだ。