けれども家柄が家柄で父母に対する重みがかゝつてゐるのだから、彼の不安懊悩は話の外で、いつそ日本の姿が消えてなくなれ、と考へてゐたものだ。
終戦となり、会社は解散する、借家も立退くことになつて、立退きをきつかけに、案外面倒もなく女と別れることができた。
実際はいくらかみれんもないではない女なのだが、女の方が却つて潔く身をひいたので、妻子のある男とみれんがましくかゝずりあつてゐるよりも、自由の天地らしいものが行く手にひらかれて見えたからであらう。
けれども家柄が家柄で父母に対する重みがかゝつてゐるのだから、彼の不安懊悩は話の外で、いつそ日本の姿が消えてなくなれ、と考へてゐたものだ。
終戦となり、会社は解散する、借家も立退くことになつて、立退きをきつかけに、案外面倒もなく女と別れることができた。
実際はいくらかみれんもないではない女なのだが、女の方が却つて潔く身をひいたので、妻子のある男とみれんがましくかゝずりあつてゐるよりも、自由の天地らしいものが行く手にひらかれて見えたからであらう。