会社の借家を立退いて、彼がやうやく見つけだした一室といふのが、焼跡の高台に小さく取残された一劃で、昔はどこかの番頭だといふ老人夫婦の侘び住居だ。
男三人の兄弟の兄と弟が戦死して、まんなかが焼夷弾の直撃で死んだといふ、気の毒は気の毒だが、因業爺で、その二階の一室。
唐紙ひとつ隣の部屋にオコノミ焼の母と娘とヒロシの三人がゐるのである。
会社の借家を立退いて、彼がやうやく見つけだした一室といふのが、焼跡の高台に小さく取残された一劃で、昔はどこかの番頭だといふ老人夫婦の侘び住居だ。
男三人の兄弟の兄と弟が戦死して、まんなかが焼夷弾の直撃で死んだといふ、気の毒は気の毒だが、因業爺で、その二階の一室。
唐紙ひとつ隣の部屋にオコノミ焼の母と娘とヒロシの三人がゐるのである。