唐紙ひとつ隣の部屋にオコノミ焼の母と娘とヒロシの三人がゐるのである。
オコノミ焼の女主人は因業爺の姉の子に当るのだが、お前さんの母親はな、私の苦しい時に一文の助けもしなかつたものだ、と、今では邪魔にしてゐるが、焼けだされてきた当座は懐に金があるのを睨んで厭な顔もしなかつた。
水商売の女のことで、その頃は応分の御礼を惜しまなかつたからだが、坐してくらへばといふ諺のせゐではなしに、敗戦後は金の値段が一桁以上狂つたから、その所持金はたかの知れたものになつてしまつた。
唐紙ひとつ隣の部屋にオコノミ焼の母と娘とヒロシの三人がゐるのである。
オコノミ焼の女主人は因業爺の姉の子に当るのだが、お前さんの母親はな、私の苦しい時に一文の助けもしなかつたものだ、と、今では邪魔にしてゐるが、焼けだされてきた当座は懐に金があるのを睨んで厭な顔もしなかつた。
水商売の女のことで、その頃は応分の御礼を惜しまなかつたからだが、坐してくらへばといふ諺のせゐではなしに、敗戦後は金の値段が一桁以上狂つたから、その所持金はたかの知れたものになつてしまつた。