彼はそれを空襲のあの轟音ともまがひのつかぬヤケクソの夢幻の心でだきしめて、ヒロシやオコノミ焼の母娘を芸者のやうに総あげの意気で飲んだり飲ませたり金をくれてやつたり、娘が家にねる時はいつも夏川の蒲団の中に寝てゐたものであつた。
よくまアあんな馬鹿騒ぎができたものだと夏川は思ふが、あれぐらゐ傍若無人の馬鹿騒ぎになると、あたりが呑まれてその気になつてしまふもので、オコノミ焼の母親まで一ぱし芸者めく気持になつてオシロイもぬりかねない打ちこみ方になつたから笑はせる。
因業爺までウヰスキーを頂戴したり何がしの引出物にあづかつたりして、幇間なみにへいつくばつてお世辞も云ひ、端唄の二つ三つ無理にも唸つてみせたものだ。