けれども主人がかの煙草入を差して談判に来て以来、森本の事はもう聞くまいと決心したので、腹の中はともかく、上部は知らん顔をしていた。
そうして依然としてできるようなまたできないような地位を、元ほど焦燥らない程度ながらも、まず自分のやるべき第一の義務として、根気に狩り歩るいていた。
或る晩もその用で内幸町まで行って留守を食ったのでやむを得ずまた電車で引き返すと、偶然向う側に黄八丈の袢天で赤ん坊を負った婦人が乗り合せているのに気がついた。
けれども主人がかの煙草入を差して談判に来て以来、森本の事はもう聞くまいと決心したので、腹の中はともかく、上部は知らん顔をしていた。
そうして依然としてできるようなまたできないような地位を、元ほど焦燥らない程度ながらも、まず自分のやるべき第一の義務として、根気に狩り歩るいていた。
或る晩もその用で内幸町まで行って留守を食ったのでやむを得ずまた電車で引き返すと、偶然向う側に黄八丈の袢天で赤ん坊を負った婦人が乗り合せているのに気がついた。