彼は魚釣りが好きであり、こゝは鮒釣りの著名な足場のひとつださうで、彼の行きつけの旅館があり、そこの世話で、取手病院といふところの、そこはもう主人が死んで病院ではなくなつてゐる離れの家へ住んだのである。
京都ではともかく満々たる自信をもつて乗りこむことができたので、そのときは書くべき題材に心当りと自信があつたからであるが、取手では、何かギリ/\の仕事をしなければ死んだ方がいゝのだ、といふ突き放された決意の外には心に充ち溢れる何物もなかつたのである。
何よりも感情が喪失してゐた。
彼は魚釣りが好きであり、こゝは鮒釣りの著名な足場のひとつださうで、彼の行きつけの旅館があり、そこの世話で、取手病院といふところの、そこはもう主人が死んで病院ではなくなつてゐる離れの家へ住んだのである。
京都ではともかく満々たる自信をもつて乗りこむことができたので、そのときは書くべき題材に心当りと自信があつたからであるが、取手では、何かギリ/\の仕事をしなければ死んだ方がいゝのだ、といふ突き放された決意の外には心に充ち溢れる何物もなかつたのである。
何よりも感情が喪失してゐた。