京都ではともかく満々たる自信をもつて乗りこむことができたので、そのときは書くべき題材に心当りと自信があつたからであるが、取手では、何かギリ/\の仕事をしなければ死んだ方がいゝのだ、といふ突き放された決意の外には心に充ち溢れる何物もなかつたのである。
何よりも感情が喪失してゐた。
それは芸ごとにたづさはる人でなければ多分見当のつかないことで、そして芸ごとも、本当に自信を失つて自分を見失つた馬鹿者でないと、この砂漠の無限の砂の上を一足づゝザクリ/\と崩れる足をふみぬいて歩くやうな味気なさは分らない。