なぜなら子供の死体の方はそれほどの凄味も想像されぬからで、親父の死体が今もなほ渦まく濛気の厚い流れの底にあり、今度はユラ/\した手でなしに、その顔がニューと私の目の前へ突きでてくる時のことを想像すると、とても再びもぐる勇気がなかつた。
伊勢甚の息子はひどくカンのいゝ青年で、私が子供の屍体をひきあげると、すぐ、戻りませうよ、と言つた。
そして二人が小舟へ戻ると、困つたことに、私が舟へ立てかけておいた大事のステッキがなくなつてゐる。
なぜなら子供の死体の方はそれほどの凄味も想像されぬからで、親父の死体が今もなほ渦まく濛気の厚い流れの底にあり、今度はユラ/\した手でなしに、その顔がニューと私の目の前へ突きでてくる時のことを想像すると、とても再びもぐる勇気がなかつた。
伊勢甚の息子はひどくカンのいゝ青年で、私が子供の屍体をひきあげると、すぐ、戻りませうよ、と言つた。
そして二人が小舟へ戻ると、困つたことに、私が舟へ立てかけておいた大事のステッキがなくなつてゐる。