叔父というのは須永の母の妹の連合で、官吏から実業界へ這入って、今では四つか五つの会社に関係を有っている相当な位地の人であったが、須永はその叔父の力を藉りてどうしようという料簡もないと見えて、「叔父がいろいろ云ってくれるけれども、僕は余進まないから」と、かつて敬太郎に話した事があったのを、敬太郎は覚えていたのである。
須永は今朝すでにその叔父に会うはずであったが、咽喉を痛めたため、外出を見合せたのだそうで、四五日内には大抵行けるだろうから、その時には是非話して見ようと答えたあとで、「叔父も忙がしい身体だしね、それに方々から頼まれるようだから、きっととは受合われないが、まあ会って見たまえ」と念のためだか何だかつけ加えた。
余り望を置き過ぎられては困るというのだろうと敬太郎は解釈したが、それでも会わないよりは増しだぐらいに考えて、例に似ず宜しく頼む気になった。