だから位地位地と云って騒ぐのが、全くの空騒でないにしても、郷党だの朋友だのまたは自分だのに対する虚栄心に煽られている事はたしかであった。
そんなら学校にいるうちもっと勉強して好い成績でも取っておきそうなものだのに、そこが浪漫家だけあって、学課はなるべく怠けよう怠けようと心がけて通して来た結果、すこぶる鮮やかならぬ及第をしてしまったのである。
それで約一時間ほど須永と話す間にも、敬太郎は位地とか衣食とかいう苦しい問題を自分と進んで持ち出しておきながら、やっぱり先刻見た後姿の女の事が気に掛って、肝心の世渡りの方には口先ほど真面目になれなかった。