それで約一時間ほど須永と話す間にも、敬太郎は位地とか衣食とかいう苦しい問題を自分と進んで持ち出しておきながら、やっぱり先刻見た後姿の女の事が気に掛って、肝心の世渡りの方には口先ほど真面目になれなかった。
一度下座敷で若々しい女の笑い声が聞えた時などは、誰か御客が来ているようだねと尋ねて見ようかしらんと考えたくらいである。
ところがその考えている時間が、すでに自然をぶち壊す道具になって、せっかくの問が間外れになろうとしたので、とうとう口へ出さずにやめてしまった。
それで約一時間ほど須永と話す間にも、敬太郎は位地とか衣食とかいう苦しい問題を自分と進んで持ち出しておきながら、やっぱり先刻見た後姿の女の事が気に掛って、肝心の世渡りの方には口先ほど真面目になれなかった。
一度下座敷で若々しい女の笑い声が聞えた時などは、誰か御客が来ているようだねと尋ねて見ようかしらんと考えたくらいである。
ところがその考えている時間が、すでに自然をぶち壊す道具になって、せっかくの問が間外れになろうとしたので、とうとう口へ出さずにやめてしまった。