朝鮮遠征に心から賛成の大名などは一人もをらず、各人所領内に匪賊の横行、経済難、困じ果てゝゐる。
町人百姓に至つては、大明遠征の気宇の壮、さういふものへの同感は極めて僅少で、一身一家の安穏を望む心が主であるから、不平は自ら太閤の天下久しからず、謀反が起つてくつがへる、お寺の鐘が鳴らなくなつたから謀反の起る前兆だなどゝ取沙汰してゐる。
家康が名護屋に向つて江戸を立つとき、殿も御渡海遊ばすか、と家臣が問ひかけると、バカ、箱根を誰が守る、不機嫌極る声で怒鳴つた。
朝鮮遠征に心から賛成の大名などは一人もをらず、各人所領内に匪賊の横行、経済難、困じ果てゝゐる。
町人百姓に至つては、大明遠征の気宇の壮、さういふものへの同感は極めて僅少で、一身一家の安穏を望む心が主であるから、不平は自ら太閤の天下久しからず、謀反が起つてくつがへる、お寺の鐘が鳴らなくなつたから謀反の起る前兆だなどゝ取沙汰してゐる。
家康が名護屋に向つて江戸を立つとき、殿も御渡海遊ばすか、と家臣が問ひかけると、バカ、箱根を誰が守る、不機嫌極る声で怒鳴つた。