すると、どこからかようやく足音が聞こえ出して、眼の前の擦硝子がぱっと明るくなった。
それから庭下駄で三和土を踏む音が二足三足したと思うと、玄関の扉が片方開いた。
敬太郎はこの際取次の風采を想望するほどの物数奇もなく、全く漫然と立っていただけであるが、それでも絣の羽織を着た書生か、双子の綿入を着た下女が、一応御辞儀をして彼の名刺を受取る事とのみ期待していたのに、今戸を半分開けて彼の前に立ったのは、思いも寄らぬ立派な服装をした老紳士であった。
すると、どこからかようやく足音が聞こえ出して、眼の前の擦硝子がぱっと明るくなった。
それから庭下駄で三和土を踏む音が二足三足したと思うと、玄関の扉が片方開いた。
敬太郎はこの際取次の風采を想望するほどの物数奇もなく、全く漫然と立っていただけであるが、それでも絣の羽織を着た書生か、双子の綿入を着た下女が、一応御辞儀をして彼の名刺を受取る事とのみ期待していたのに、今戸を半分開けて彼の前に立ったのは、思いも寄らぬ立派な服装をした老紳士であった。