向うの電話口へ出たものは、敬太郎の言葉つきや話しぶりの比較的横風なところからだいぶ位地の高い人とでも思ったらしく、「どうぞ少々御待ち下さいまし、ただいま主人の都合をちょっと尋ねますから」と丁寧な挨拶をして引き込んだが、今度返事を伝えるときは、「ああ、もしもし今ね、来客中で少し差支えるそうです。
午後の一時頃来るなら来ていただきたいという事です」と前よりは言葉がよほど粗末になっていた。
敬太郎は、「そうですか、それでは一時頃上りますから、どうぞ御主人に宜しく」と答えて電話を切ったが、内心は一種厭な心持がした。