たまたま前村長が病死して、他に適当な人がなかったために、推されるままに引受けてしまったのだが、人々の話では役場へでて村長の席に坐っているだけでよいような話であったし、自分の記憶でも、余の叔父が村長のころは用あれば役場の小使が迎えに来たもので、さもない限り彼は終日自宅で碁をうっていたものだ。
その思い出を助役の羽生に物語って、そのようでよろしければやれないこともないと云うと、彼はそれに答えて、
「御承知の如くに終戦後はがらりと世相が変りまして、この山里でも都会なみにかれこれと理窟を申したがる人物もおりますので、毎日定刻の御出勤だけは御面倒でもお願い致したいのです。