書生は敬太郎を覚えていたのか、いないのか、ただはあと云ったなり名刺を受取って奥へ這入ったが、やがて出て来て、どうぞこちらへと応接間へ案内した。
敬太郎は取次の揃えてくれた上靴を穿いて、御客らしく通るには通ったが、四五脚ある椅子のどれへ腰をかけていいかちょっと迷った。
一番小さいのにさえきめておけば間違はあるまいという謙遜から、彼は腰の高い肱懸も装飾もつかない最も軽そうなのを択って、わざと位置の悪い所へ席を占めた。
書生は敬太郎を覚えていたのか、いないのか、ただはあと云ったなり名刺を受取って奥へ這入ったが、やがて出て来て、どうぞこちらへと応接間へ案内した。
敬太郎は取次の揃えてくれた上靴を穿いて、御客らしく通るには通ったが、四五脚ある椅子のどれへ腰をかけていいかちょっと迷った。
一番小さいのにさえきめておけば間違はあるまいという謙遜から、彼は腰の高い肱懸も装飾もつかない最も軽そうなのを択って、わざと位置の悪い所へ席を占めた。