女が停留所で待ち合わしているところへ男が来て」
田口はまた普通の調子に戻って、真面目に事件の経過を聞こうとした。
実をいうと敬太郎は自分がこれから話す顛末を、どうして握る事ができたかの苦心談を、まず冒頭に敷衍して、二つある同じ名の停留所の迷った事から、不思議な謎の活きて働らく洋杖を、どう抱え出して、どう利用したかに至るまでを、自分の手柄のなるべく重く響くように、詳しく述べたかったのであるが、会うや否や四時と五時とのいきさつでやられた上に、勝手に見張りの時間を延ばした源因になる例の女が、源因にも何にもならない見ず知らずの女だったりした不味いところがあるので、自分を広告する勇気は全く抜けていた。