一生は愚かなこと、わづかに瞬間が二つ移動するあひだには、恐らく二人の女のために心を奪はれてゐるだらう。
そのこと自体は不幸でもなく特に幸福でも有り得まいが、一人の女に惚れきれないといふことが、余りにも明確に冷血な淫慾を知ることが、時々私を不安にするといふことを諸君は信じて呉れるだらうか?
私は蕗子と別れることに古着を棄ると同じ程度の感慨すら覚えぬことを知りすぎるほど承知してゐる。
一生は愚かなこと、わづかに瞬間が二つ移動するあひだには、恐らく二人の女のために心を奪はれてゐるだらう。
そのこと自体は不幸でもなく特に幸福でも有り得まいが、一人の女に惚れきれないといふことが、余りにも明確に冷血な淫慾を知ることが、時々私を不安にするといふことを諸君は信じて呉れるだらうか?
私は蕗子と別れることに古着を棄ると同じ程度の感慨すら覚えぬことを知りすぎるほど承知してゐる。