友情に軽薄な父であるが、この若者には恰も動物が動物に寄せるあの一種嗅感的関係に彷彿とした不思議な親愛と敬意を払つてゐたのであつた。
妹は半年足らずのうちに離婚した。
性病に感染し不具者になるところは免れたが、父がとんと田舎紳士の腹心で、癪にさはるほど言はでもの弁護をする、妹の泣言には一々向つ腹を立ててしまふ、悪徳の正義に就て情熱の最後の滴まで傾注した訓話を述べるといふ始末で、あげくの果には婿と手をとつて遊興に出陣する態たらくに居堪らず、妹は婚家を、同時に故里を、父を、逃げて上京した。
友情に軽薄な父であるが、この若者には恰も動物が動物に寄せるあの一種嗅感的関係に彷彿とした不思議な親愛と敬意を払つてゐたのであつた。
妹は半年足らずのうちに離婚した。
性病に感染し不具者になるところは免れたが、父がとんと田舎紳士の腹心で、癪にさはるほど言はでもの弁護をする、妹の泣言には一々向つ腹を立ててしまふ、悪徳の正義に就て情熱の最後の滴まで傾注した訓話を述べるといふ始末で、あげくの果には婿と手をとつて遊興に出陣する態たらくに居堪らず、妹は婚家を、同時に故里を、父を、逃げて上京した。