行つてみると雨宮紅庵がそこにゐて、蕗子と話しこんでゐた。
紅庵は自分の部屋にゐるやうな寛ろぎかたで、すつかり腰を落付けて勿体ぶつて喋つてゐたが、伊東伴作は嫉妬の苦痛を感じなかつた。
寛ろいだ話しぶりにも拘らず、その口ぶりにも動作にも紅庵の宿命的な内攻生活から派生する一種陰惨な暗い傷ましさが漂ふばかりで、蕗子との肉体の交渉なぞは毛頭想像の余地がないばかりか、潜在的な姦淫の焔がちらちらと洩れ、それが却つて彼の姿を悲しいものに思はせるのであつた。
行つてみると雨宮紅庵がそこにゐて、蕗子と話しこんでゐた。
紅庵は自分の部屋にゐるやうな寛ろぎかたで、すつかり腰を落付けて勿体ぶつて喋つてゐたが、伊東伴作は嫉妬の苦痛を感じなかつた。
寛ろいだ話しぶりにも拘らず、その口ぶりにも動作にも紅庵の宿命的な内攻生活から派生する一種陰惨な暗い傷ましさが漂ふばかりで、蕗子との肉体の交渉なぞは毛頭想像の余地がないばかりか、潜在的な姦淫の焔がちらちらと洩れ、それが却つて彼の姿を悲しいものに思はせるのであつた。