わけの分らないことなので無暗に腹が立つばかりだが、腹が立つと益々みんな分らなくなつてきた。
アパアトへ越して後は留守のうちに紅庵が来たといふ形跡もなかつたやうだし、蕗子の方から紅庵に引越先を教へてやつたならとにかくとして、道に待ち伏せたうへ伴作の後をつけて行先を突きとめたとしか思はれない形跡から考へてみても、前後の様子が曖昧至極になるばかりで、筋道が立たず、腑に落ちないことばかり多いのだつた。
騙され方の筋道が通らないので、腹の立ちやうまで煮えきらないやうになつてくるし、さういふ腹の立て方まで癪にさはつてくるのだつた。