「君のハズの話は、それから君の話も、かれこれ一年ぐらゐ前から度々紅庵にきかされてゐたよ。
つまり亭主が無能者で、女房の方は勿体ないほど綺麗なんだが、肉体のほんとの快楽を経験しないせいか無意識には相当ヂリ/\した不満を感じながら、それが性的な原因から来てゐることにさへ気付かないやうだと言ふんだね。
あのままにしておくのは勿体ないから大胆に本能的な生活をするやうにと勧めてゐるが、といふやうなことを言つてゐたが、それぢやなんだね、紅庵はもうその頃から君の家へ繁々通つてほんとに浮気を奨励してゐたわけか。