死には一文の値打もなく語る値打もなかつたのだらう。
私は彼が自殺に就て語つたただ一つの場合だけを記憶してゐる。
牧野さんが泉岳寺附近にゐた頃だから五六年前のことだが、稲垣足穂が突然やつてきて、貧乏で食へないしめんどくさいから首でもくくらうと思つてね、と唄でもうなるやうな早口でベラ/\まくしたてたといふ話だつた。
死には一文の値打もなく語る値打もなかつたのだらう。
私は彼が自殺に就て語つたただ一つの場合だけを記憶してゐる。
牧野さんが泉岳寺附近にゐた頃だから五六年前のことだが、稲垣足穂が突然やつてきて、貧乏で食へないしめんどくさいから首でもくくらうと思つてね、と唄でもうなるやうな早口でベラ/\まくしたてたといふ話だつた。