然し派手な着物をきて鼻先から額に汗をにぢませた女共が遠慮会釈もなく框の上へどつこいしよと荷物を投げ込み、犬屋の店先であるかのやうに口々に吠え、而して遂にわが良人なる人物が汗にまみれて疲労のどん底にありとはいへ、真剣なることアトラスのごとき重々しさで大きな行李をかつぎこんでくる様を認めた時に、松江は思はずきやッと叫んで台所へと退散した。
無意識のうちに下駄をつつかけ、ただフラ/\と外へでた。
半分は餓鬼共の遊び場であり、半分は塵芥棄場でもあるところの異臭芬々たる広場へでると、恰も青空の広さをめがけて突き走るもののやうに熱い涙がこみあげてきたのであつた。