同じ頼みを松江は三度くりかへした。
おたきはいくらか気色ばんで立上ると、奥の部屋から富山の売薬袋をもちだしてきて、入用の薬をこの袋から探しだして持つて帰れと早口に言つた。
堪へうる限りの忍耐の結果が、一円の金ですらなく、売薬にすぎないことが分つたとき、逆上のあげく失神しさうな自分を感じ、一時も早く鬼の前から逃げ去ることを希ひながらひたすら道を歩いてゐる自分の姿に松江はやうやく気付いたのだつた。
同じ頼みを松江は三度くりかへした。
おたきはいくらか気色ばんで立上ると、奥の部屋から富山の売薬袋をもちだしてきて、入用の薬をこの袋から探しだして持つて帰れと早口に言つた。
堪へうる限りの忍耐の結果が、一円の金ですらなく、売薬にすぎないことが分つたとき、逆上のあげく失神しさうな自分を感じ、一時も早く鬼の前から逃げ去ることを希ひながらひたすら道を歩いてゐる自分の姿に松江はやうやく気付いたのだつた。