さうして斯様に雑多な又錯雑を極めた人間関係の追求によつて、人生の秘密であるところの生命慾や恋情や野望や抽象的な絶望や救ひが、小説の結果としてやや鮮明に描きあげられてくるのだらうと思はれたのだ。
小説に於ては、作家の思想は決して抽象的な思想の形式に於て語られるものとは限らない。
人生に対するところの角度がすでに作家の最も根強い思想を語つており、又前述の場合に就て言へば、掴みだした人生の角度は相似であつても個々の対象に向けられる作家の興味、問題として取りあげそれに食ひこむ作家の興味、それによつて作家の思想は根底的に明白となる。